道端を、男子高校生が数人、軟式の野球ボールを蹴りながら歩いていた。
その様は少しぎこちなく、とりあえずサッカー部ではなさそうで。
そして、誰かがミスり。
ボールは後ろに転がる。一人が、とっさに振り向いて、追う。
その動きには無駄が多かったので、運動部所属でもないのだろうけど。
とにかく、振り向いた先には、勿論それを見ていた僕がいるわけだ。
そして、振り向いてボールを追った一人は、それにも気づかず、ボールを捕まえる。
「なにやってんだよー!」
それを見ていた他の一人が、大きめの声で口に出す。
他の数人は、それを笑って見ている。


全く何でもない風景だ。青春の一ページとか言うこともできるんだろう。
だけど、僕はとりあえず一つ気になった。
ボールを追った少年。余りにも周囲に無頓着。
コントロールを失ったボールにだけしか注意が向かない。
振り向いた瞬間からうつむきっぱなし。そのうち轢かれんじゃないか。


別にそれを非難するとかそんなつもりがあるわけじゃなく。
単に、振り向いた瞬間に、視界の端にでも周りの風景を映す人間でいたい。
そう思っただけの話ではあるんだけども。
そんなことを考えながら歩いてたら、もう一つ、ふと思ったことがあって。
周りが見えてないやつより、笑ってたやつより。
「なにやってんだよー!」って言った一人。こいつが一番駄目だよなぁ。
それを、大き目の声で言うことによって。
うっかり、この件に自分は関係ない、と主張してしまったわけだ。
そして、それに思い当たって非常に嫌な気分になったのは。
僕だってうっかりするとおんなじことを言ってしまいかねないことに気づいたからだ。
笑ってるだけに見える第三者って、実は、かなり偉い。とか思うのは考えすぎだろうか。