the pillows 15周年ライブに寄せて

the pillowsが15周年を迎えた2004年9月16日。ピロウズのトリビュートアルバムが発売された。この日本の西の果ての地でも、数枚入荷していたCDは、数日後には売り切れていた。まぁそれはともかくとして、このトリビュートアルバムの中に、GOING UNDER GROUNDが演奏している、"LITTLE BUSTERS"という曲がある。ライブなんかで披露していたらしく、前評判は非常に高かったのだが、実際に聴いて、僕は非常にがっかりである。僕がこのバンドを好きでないことを差し引いたって、消化不良の感は否めない。ミスマッチ、理解不足(←敢えて言わせて貰います)に加え、何といっても、その原因だと思われるのは、ダイナミズムの欠如。ピロウズというバンドは、圧倒的に世界観を作る山中さわおのワンマンバンドではなく、その世界観を高い純度で描き出すことの出来る、ドラムの佐藤シンイチロウと、ギターの真鍋吉明あってのものだということは、ファンなら周知の通りである。そして、"LITTLE BUSTERS"という、ソングライティング的には比較的大したことのないこの曲が、ピロウズのライブにおいて、非常に重要なナンバーであることの理由としては、ギタリスト・真鍋吉明が、凝ったプレイをすることとは全く別の次元の、感情とダイナミズムで盛り上げていく、実に稀有なギタープレイをすることが挙げられると思う。
先日、ピロウズの15周年ライブに、恥ずかしながら遠征をしてまで見に行った。お祭りとしては非常に良いものだったのだが、いつだったかはてなに書いた不安が的中の様相を見せてきたのも事実であった。そして、その不安は、思っても見なかったところから姿を現したのである。
もともと、ピロウズというバンドは、卓抜した演奏力を持ったバンドではないと思う。しかし、そのバンドの演奏が描き出す空気感、というものに関しては、凄まじいものがある。だから、普段は演奏の問題というのは、ミスとかがあったって、全く気にならない。しかし、この日は気になってしまったのだ。この日、2時間30分、全30曲という長丁場のライブにおいて、ギターの真鍋氏の右手の魔法は、間違いなく途切れた。普段ならライブでも演奏するようなフレーズは端折ったし、ただのコードストロークだからこそ、全霊をかけていたはずのバッキングでは、明らかに指先までの神経伝達に欠けていた場面を何度も目撃した。その日、彼のプレイがメーターを振り切ったのは、本編ラスト、"ハイブリッドレインボウ"一曲だけであったと思う。特に、その2曲前、日本屈指のギターミュージックであると僕が認識している、"swanky street"でそのメーターが振り切れなかったのは、僕にとっては非常なショックだった。
今僕は、ピロウズに対して、カサノバスネイク以降のミッシェルガンエレファントに対する危惧に似た感情を抱いています(まぁこの言い方に関しては反論もあるかもしれないが)。16日のライブで、出来うるなら、それを払拭したかった。それは叶わなかったけれども、勿論僕はそれでもピロウズが大好きだし、少し、先述したように、本編ラストのハイブリッドレインボウでは、ありえないような盛り上がりを作り出す、ピロウズを、まだ信じられると思う。最後に、もう一回だけ言わせてください。僕はピロウズが大好きです。「今日からお前ピロウズ以外聴くな」とか言われても全然大丈夫なくらい。あ、でもJELLYFISHの2枚も認めてもらえると嬉しい。