谷口崇/①に戻る asin:B0007TFA0Y

kitschsyrup2005-04-09

5年ぶりのアルバムは、なんというか、実に正直な出来に仕上がって。「天才」というカタガキで、鳴り物入りでデビューしたこの人なんだけど、インディーでの発売となったこのアルバムは、やっとその呪縛から解き放たれた印象を強く受ける。天才と呼ばれたその豊かな音楽性は、デビュー当時、恵まれた環境を得ることによって、周りのスタジオミュージシャンを巻き込んで、マニアックな仕上がりを見せた。それはポップスとしての極上の仕上がりを見せているんだけれども、それはひょっとしたら、谷口崇、本来の歌うたいとしての側面を薄めていたんじゃないか。
そんなことを思わせる、今作の正直な歌、歌、歌。独特で、だからこそ嘘のない歌詞は、そんな歌詞を乗せるためだけにつけられたかのようなメロディに乗って。実にパーソナルなその歌は、特に喪失だとか悔恨だとか諦めだとかを、相変わらず鋭くえぐっている。パーソナルに徹した歌ってのは、ふとした拍子に人との壁を越えて、こっちに響いてくるものだと思うんだけど、谷口崇って人の歌は、かなりの高確率でその壁を越えてくる。ただ、世の大抵のそういった曲が「越えてきちゃったぜ」って顔をしているのに対し、この人の歌は、そういう主張を一切しない。何言ってるかわかんねーから自分には関係ないか、とか思ってるうちに、気づいたらこっち側にいて、何度も僕を愕然とさせる。そして一曲丸ごと愕然とさせられるような曲も毎回入っていて、今作で言えば、2曲目の『エンド・オブ・イノセンス』。待ってて良かったよ。そして、これからも大丈夫だ。佐賀出身、福岡育ちだっけか。こっちまでライブ来ないかなぁ。

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